■茶道具 | ■美術品 | 日常茶飯事ということばがあります。意味はありふれたことということです。おそらくこのページをご覧いただいている皆様のご家庭には,ひとつは急須があることと思います。 急須のことを,中国では茶壺といい日本では,煎茶道具として江戸中期くらいから用いられています。特に中国の急須すなわち,唐物急須とよばれていた宜興茶壺は,お茶を入れる道具という用途だけでなく,文房具書道の水注ぎとして用いられたり,美術品として蒐集の対象になったりもします。 昔から文人墨客の趣味にあうものとして,独特の風格があり,宜興茶壺をコレクションする人のほとんどがこういった唐物文人趣味の香りがするものを好みます。 また,いわゆる薬をかけない朱泥の焼き締め急須は,中国の宜興だけでなく下の表のようにいろいろなところで作られています。特に日本では,唐物急須が江戸末期から明治にかけて異常に高かったため,手に入れてもそれを普段は使わず,京焼きなどの煎茶道具作家たちに写しを作らせ,日常使いには日本の写しを使っていたようです。そのため,日本では各地で朱泥の急須が作られていました。その他,工夫茶として小さい急須を好んでいた汕頭,潮州,台湾などでも昔から宜興のコピー品が作られています。 |
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■文房具 |
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茶壺の分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
茶壺は,昔から世界各地で作られています。ここでは,紫砂壺という観点から右のように,分類してみました。 大体生産されている地域と,時代によって区分けしてあります。 気をつけなければいけないのは,我々が普段宜興と思って購入しているものの大部分は,潮州や広西欽州窯,台湾などで作られているもので宜興純正はかなり少なく,中でも古壺とか宜興作家ものと呼ばれているもののほとんどは,通常の手段では手に入れることは出来ないと言うことです。 |
紫砂(朱泥)急須の区分
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茶壺の分類(詳細) | |||||||
中 国 製 ・ 唐 物 | 宜興 | 古壺 | 作家・上手 | 手工タタラ | ◎ | 一般的に古壺というと明代終わりから,民国晩期くらいに作られ今でも残っているものを指し,そのなかでも名家と呼ばれる作家の手によるものを作家ものとか上手(じょうて)という風に呼びます。 宜興窯の特徴として,土の生成から焼成までを一人の作家が行ったため,昔から作家の名前が茶壺の底に入れられています。景徳鎮など他の窯は分業が進んでいたことと,宮廷に納める関係から作家の個人名が入ることはありません。 価値があるため,当然偽物も多く出回っています。 |
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粗製・下手 | 手工/型出し | ○ | 古壺でも,日用雑器つまり普段に使うものとして作られたものを粗製あるいは下手(げて)といいます。恵孟臣などの作家名(もちろんコピー)か款が無いものが一般的です。 中でも倶輪珠(ぐりんだま)と呼ばれるものなどは,古雅な感じがあって茶道具としては喜ばれます。 また,すでに清朝初期には民国の作家の模倣(コピー)がたくさん作られており,これらも雑ながらおもしろみがあります。 中国茶などで使う場合,現在はそう価格も高く無いのでおすすめです。 |
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早期壺 | 量産品 | 手工/型出し | ○ | 民国末期から,新中国から文革終わりまでのものを通常早期壺と呼びます。文革以降,土の生成や焼成方法が近代化され,均等な品質で安価な製品が作られるようになる一方,茶壺としてのおもしろみは減っていきます。早期壺はそんななかで,最後の雅趣をもったものといえます。 また,玉石混淆の状態ではありますが,一般的には良いものが多くあります。 また,日本の煎茶道具として注文に応じた,昔の孟臣壺のコピーなどもこの時期はまだ大量に作られています。 古美術展などで売られている古壺も,ほとんどは,民国終わりから文革時のものと思ってよいと思います。 また文革時には,蓋の裏にのみ作家名が入り,通常底の部分には中国宜興というマークか,漢君などという茶壺の名称のみが入ります。 この時期,今では名人クラスの作家が作っていたものもあり,そういうものにであうと掘り出し物といって,良いものが安価に手に入ったりもします。(まぁほとんどありません。出ても偽物です) |
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現代 | 作家もの倣作 | 手工タタラ作り | ◎ | 80年代以降,また作家名が入るようになり,中国国家や江蘇省などで職称と呼ばれる資格制度が敷かれると,位の高い作家のものは「現代作家もの」と呼ばれ珍重されるようになります。なかでも,高い技術を持った職称の作家が,昔からの伝統的なデザインのものを再現したものは収蔵価値があります。 洗練された土を使い,何日もかけて完全手作業で作られた現代作家の作品は,本当にすばらしいものがあります。 ただし,こういった人間国宝とか伝統工芸師クラスの作品は通常,市場に出回ることはほとんどなく,注文生産でダイレクトに取引されます。中国の市場に普通に展示されているものは従ってほとんどが贋作と言って良いと思います。 |
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作家もの新規 | 〃 | △ | 同じ作家ものでも,自分で新たに造形をデザインしたものがあります。これが大部分は趣味の悪いものが多く,私個人的にはおすすめしません。最近は,自分の資格を上げるためには珍奇なデザインのものをコンテストに出品して入賞しないといけない?という困った事情もあり,文人趣味の漂ってこない,奇をてらったものが多く困ったものです。 しかも,非常に高かったりします。手を出さないことです。 |
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量産品 | 手工/型出し | △ | 宜興に行っても,作家ものというのはほとんど店にはありません。宜興の市内で売られているのは皆,量産品か作家もののコピーです。もちろん,他の中国各地に流通しているものも,そのほとんどがコピー品です。 第一工場などがつくる,量産品ならまだ良いのですが,コピー品でお茶を飲むのはどうもいただけません。 まず作家名などに名人クラスの名前が入っていないもの。伝統的なデザインのものをえらぶようにしましょう。 |
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汕頭潮州 | 古壺 | 量産品 | ろくろ引き | ○ | いわゆる工夫茶の盛んだった,汕頭,潮州あたりでは小さな宜興の孟臣壺がお茶を入れるためには最高のものだと言われていました。宜興の茶壺が当時から高価であったため,地元の窯で焼かれたものが汕頭ものと呼ばれているものです。 特徴は宜興のようにタタラ作りでなく,ろくろ引きであることです。 デザイン的には,恵孟臣のものをコピーしたものがほとんどで,それほど悪い形のものはありません。 お茶を入れるには悪くないと思います。 |
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現代 | 〃 | 型出し | × | 香港や各地の中華街などで売られているほとんどがこの手のものです。 | |||
広西 欽州窯 |
早期〜現代 | 量産品 | ろくろ/型出し | △ | これも,宜興をコピーしている大規模な窯。現在も作られており,安価なため中国国内ではここの茶壺を宜興といって売られているケースが多い。 | ||
玉成窯 | 古壺 | 作家もの | タタラ | ◎ | 越窯付近の玉成窯で,清朝末期に宜興から作陶技術がTTされ,一時期朱泥の急須が作られました。現存するものは非常に少なく,ほとんど目にすることはありません。 | ||
その他 | 景徳鎮や,徳化窯,龍泉窯など各地で茶壺は作られている。玉石混淆。磁器で釉薬のかかったものが多い。 | ||||||
台湾製 | 作家もの | 現代 | 全手工 | ろくろ引き | ◎ | 茶壺というものは,注ぎ口と把の制作が一番難しい部分です。全手工の作家ものというのは,そのすべてを手作りでおこなっている作家のものです。台湾では,阿萬師,呉政憲,修顔など数えるくらいの作家しか全手工をしていません。 | |
半手工 | ろくろ引き | ○ | 台湾作家ものの大部分がこの半手工という制作方法を行っています。つまり,本体はろくろ引きで作り,注ぎ口と把は型出しするという手法。 台湾茶壺がバランス良く,しかも安価で使いやすいというのはこの製法によるところが大きい。 |
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量産品 | 型出し | △ | 台北市内だけでなく,日本など大部分で安価で売られているのがこの,台湾コピー品。古壺のコピーから,現代作家もの。奇妙なものまでなんでもあれの世界。 日曜玉市などに出ているのはほとんどこのタイプ。 |
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日本製 | 備前 | 古壺 | 量産品 | タタラ,ろくろ | △ | 備前では,明治期の煎茶ブームの時に大量に宜興のコピーを作っています。宜興に迫る出来で,宜興として通っているものも多い。 | |
佐渡 | 古壺 | 作家もの | ろくろ | ○ | 佐渡金山から取れる赤土を原料に,明治期に三浦常山によって佐渡朱泥急須が「無名異焼き」として大量に作られました。完全な宜興のコピーで,雅趣もありすばらしいものです。残念ながら現在は朱泥の急須を作っている窯はほとんどありません。 | ||
常滑 | 古壺 | 作家もの | タタラ | ◎ | 明治期に,宜興から金士恒という作家を招聘し,宜興のコピーを生産しました。当時は完全な宜興のコピーでタタラ作り。 | ||
現在 | ろくろ | △ | 現在も朱泥の急須を作っている。ただしろくろ引き。 | ||||
その他 | 京焼きやそのほかの窯でも朱泥急須は作られています。当時宜興ものは非常に高価で,宜興のものが手に入ったら,大体それを近くの窯でコピーを作らせ,日常はそれを使っていたようです。 また,青木木米に代表される日本独特の横手急須文化があり,唐物とは別の味でコレクターも多い。 |
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その他 | 世界各地 | ヨーロッパなどでも宜興のコピーは盛んに作られ,有名なウエッジウッドなども当初は宜興のコピーを作る工房として立ち上がったようです。 |