茶壺の造形的な特徴
大きな茶壺や紫砂泥のもの時代の特徴がはっきりしていて,少しなれると,時代がある程度分かるようになりますが,朱泥の小さな茶壺は,まず専門家でも正確な時代を判別するのは難しいといわれています。


明末〜清朝初期の古壺
明末から清初にかけては,あまり小さなものは残っていません。
この茶壺は清朝初期くらいのものですが,まず,把の付け方が上下ともにかなり上になっていることがあります。




一番わかりやすいのは,蓋の内部の処理です。この写真のように,内部はきれいに成形されておらず,継いだ後がそのままになっています。

清朝中期の古壺
この茶壺も清朝初期〜中期くらいあります。この時代の特徴としては,やはり,把の付け方が上になっています

第2の特徴は,蓋袴の長さと形です。比較的時代のある茶壺の蓋は,このように,非常に短いものになっていることと,写真で分かりづらいのですが,袴の断面が逆算角形になっており,袴全体が,下に行くに従ってすぼまっているという特徴があります。袴の長さは,蓋の直径の1/6というのが標準です。ただし,一時期日本の備前で作られた宜興写しも,このような袴となっているので注意が必要です。
古壺は,一般的に把の部分か注ぎ口の部分のどちらかに,このような張り合わせ跡がはっきりと残っています。
注ぎ口が単孔であるのも特徴です。
清朝中期から末期
中期から末期にかけての小壺は,実にバランスも良く,美しい形をしています。すべてにつけて絶妙なバランス。
しっかりとした把も特徴です。
民国の茶壺

民国の頃のデザインは把がかなり細くなってきます。把をつける位置もバランスや重心を考慮したものになります。

清朝中期から末期にかけて,だんだんと袴が長くなっていき,民国時にはこのように極端に長い袴も登場します。この長い袴は,功夫茶用として,茶壺に目一杯お湯を入れても,たれてこないという実用性をかねています。
この時期の一部の茶壺には,多孔への経過として4孔のものがあります。
現代の茶壺
これ以上無いという良いバランスです。ボディの形と,把の虚形とのバランスが現代的で洗練されています。

多孔が基本です。

袴は極端に長くなくバランスの良い感じになっています。
80年代から90年代にかけて,このようなゴルフボール型の注ぎ口が作られました。これは中国圏では,日本からの発注で作られたもので,「蜂の巣」と呼ばれています。最近はあまり見ません。
スワトウ茶壺の特徴

スワトウ製の古壺
スワトウ古壺はこのように良いものものもあります。

スワトウ壺は,昔から潮州スワトウで工夫茶用の道具として無くてはならない宜興「孟臣壺」の不足を補うコピー品として生産されてきました。
同様の理由で昔から,香港・台湾・日本などにもかなり早い時期から輸出されています。スワトウの古壺は,それはそれで,味があるといえます。ただし,現在のスワトウ壺は,この特徴はなく,型出しでもっと煉瓦のような感じのぬめっとした胎で,まったく食指が動きません。(現在香港で売られている茶壺の大部分は粗悪なスワトウ壺です)


土味が全く宜興のものもとは違います。
このぼつぼつしている部分は,梨皮(正式には調砂)といいます。このようなぼつぼつ(調砂)がスワトウの特徴ではなく,宜興にもあります。これは,宜興の調砂をスワトウでまねたもので,珍しいものです。土味の差はその下の胎を指しています。

スワトウ製の胎
一見すると宜興製とも見えます。(現に古美術店などではこれを宜興といって売っているところも結構あります)


蓋の袴が外側の胎と色も艶も違うのが特徴。

一番のポイントは,内部の底がろくろで作ったように同心円状になっていることと,張り合わせ跡が無いことです。また,内部は一般的に輝きがなくすぐに分かります。
台湾製茶壺

台湾製の茶壺もすぐに判定がつきます。スワトウ製のもの以上に土味が違います。一般的にはこの茶壺のように研磨して艶を出しているものが多いです。

スワトウ製の胎台湾製の茶壺は,ろくろ作りですから,このように胎にろくろ跡がはっきりと残っています。(この跡があるものは,手[キ立]といって手工製の明かしでもあり,逆に台湾製でこの跡がないものは,型出しの量産品ということです。)
初期常滑茶壺
初期常滑は,現在のようなろくろ成形ではなく,宜興と同じタタラ作りです。従って,胎の中は張り合わせあとがあります。胎が宜興と異なるので上の写真のように化粧土をかけ,宜興の雰囲気を作っています。
常滑はすぐにタタラ作りをやめ,ろくろ引きに変わってしまうので,この手のものは貴重です。