茶壺を買う
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 全面的に書き換えました。茶壺を買う際のヒントになれば幸いです。

たかが急須,されど・・・です。キーワードは定番ということ。つまり,昔からある伝統的な形のものにこだわってください。まず一着目のスーツは,チャコールグレーかミッドナイトブルーの無地を!というのと同じです。

 茶壺には定番の形があります。逆にそうでないものものもあります。ほかのページでも,説明していますが,見て妙なものは使っても妙です。へんてこなものを見て,宜興の茶壺はだめ!なんていわないでください。百年以上受け継がれてきた形には,急須としての機能美があり,最近のデザインや,ルールのわからないまま作ったコピー商品は,手を出さないに越したことはありません。

 

最初の一個
1ランク上の茶壺を
コレクション
一生もの

こういうのは買うのをやめましょう

 

最初の一個

朱泥水平標準壺
定番中の定番!
全体のバランスが良く,
無駄な箇所がありません。

朱泥漢珠壺
どっしりとした安定感が
あります。

紫泥蓮子壺
注ぎ口と把(取っ手)のバランス!
本体と一体感があります。
このくらいの色が紫泥です。
定番のものを!
 茶壺を買う場合,形の面白さについ目がいきがちですが,定番のものをまずそろえましょう。
最初から,妙な形のものを買うのはお勧めしません。ときどき,いくつも茶壺を持っているのにひとつも定番のものがないというかたがおられます。どうでしょう?やはり基本をおさえてからだと思うのですが・・・

定番の形 茶壺の場合定番とは,水平標準壺とよばれるものです。あるいは,漢珠というすこし丸みを帯びたもの・また蓮子壺などもよいでしょう。
この3つくらいから選べばok。まず変な形からコレクションを始めたら皆変なものになってしまいます!
それと,三平など基本原則から外れていないものを買いましょう。
どこでかうか 最近はデパートとか,ネットショップで簡単に手に入るようになりました。
中国物産展とか,みやげ物屋のものは,あまり手を出さないほうが無難かもしれません。宜興のものでないものがほとんどです。
ネットショップを見ていると,結構妙な形のものがあったりします。まず一個なら,水平標準壺など基本の形を在庫している店をえらびましょう。

よく初めての方が失敗するのは,掘り出し物を探そうと思って,妙なところで売っているものを買って結果として,最悪なものを買ってしまうということ!最初は定番です。

■中国や台湾で買う場合・・・
とりあえず信用のおける専門店で買いましょう。。
XX市など露天のものは,絶対に手をだしてはだめ。骨董屋さんもやめましょう。それから,観光地にある茶壺専門店のものもだめなことが多いです。一般的には,茶葉屋さんで買うよりも,茶壺専門店のほうがコスト的には安くなるようです。
定番の色 茶色のような紫泥か,明るい朱泥とよばれるもののどちらかから選びましょう。
緑とか,青とか別の色は「だめ茶壺」の可能性が高いです。紫砂といっても,本当の紫はもう材料の土が枯れてしまってありませんから,濃い茶色と思ってください。最近売っている本当の紫色はだめ(着色)です。
注意点 良い茶壺のコンテンツにも書きましたが,
(1)傷のないもの。
(2)妙に重くないもの
(3)全体のバランスが良いもの
(4)てかてか光っていないもの
あたりはチェックしましょう。

型成型か,手作りか
 入門クラスのものは宜興純正品でも石膏の型から作り出したものです。もうすこし高級なものからは,タタラつくりという板状にした土を丸めてたたき出して作る方法を使います。廉価な茶壺でしたら,型出しのほうが型さえしっかりしていれば良いかもしれません。型で出したものは,注ぎ口のしたあたりをみると,ちょっと縦に筋が入っています。これが接合部分です。手作りのものは,底の部分をはめ込みますので,底にそって接合の後があるものがあります。(これがいわゆるはめ底跡です)
値段は 3〜5000円くらいまでのもので十分だと思います。
中国なら,300元くらい。台湾なら1000元くらいが入門としては良いと思います。数元からありますが,まずだめです。

それ以外にも,茶杯などの基本セットが必要になると思いますので,あまり茶壺だけに予算をつぎこめませんね。あと,茶壺と茶杯や茶船などがセットになったものもありますが,紫砂の茶杯はだしたお茶の色がたのしめませんから,茶杯は見込み(中)の白いものを選ぶか,磁器のものにしましょう。詳細は,別コンテンツを参照してください。


1ランク上の茶壺を

早期水平標準壺
made in chinaの
シールがついています。

早期漢珠

荊渓恵孟臣製のマーク
早期壺
入門編はもう卒業!という方が次にゲットしていただきたいのは
早期壺です。早期壺とは,中国宜興で,文革時期から80年頭くらいに生産された茶壺です。いろいろな原因があるのですが,簡単に言うと,この80年代を境にしてそれ以前と以降ではまったく茶壺の土の質がことなるのです。早期壺は実に良い土を使っています。土だけでなく,さまざまな部分で合理化や機械化がなされたため,最近のものは早期壺にくらべるともうひとつ面白みがありません。早期壺は,今出来のものとは違って,養壺(茶壺を磨いてつやをだす)がしやすく,お茶もおいしく入ります。

このステップからは,皆さんの目が重要になります。つまりだまされる可能性がもうこのあたりからはゼロではありません。このランクのものを探すのは,オウン・リスクで考えてください。
まず,当然ながらすでに生産されていませんから,早期壺をくれといっても,一般のお店にはありません。(台湾には早期壺を扱う専門店がいくつかあります)日本で残っている可能性があるところでは,「筆墨」などを売っている店です。地方の日本茶屋にも残っている可能性はあります。宜興の茶壺で小さいものは,墨の水入れとして使われていました。でも,もうほとんどないかもしれません。

ポイントとしては,土の肌なのですが,それを説明してもおそらく現物をご覧になっていない方には理解がいただけないと思いますので,目安としては,下の写真にあるような茶壺の底に押されたシールマーク(落款)です。
早期壺の場合底のシールマークには大きく2つあって,ひとつは「中国宜興」と書いてあるもの。
もうひとつは難しいのですが,篆書という字体で「荊渓恵孟臣製」と書かれているものです。荊渓とは,宜興の昔の名前。孟臣とは,明の頃の恵孟臣という名家の名前です。
最近の茶壺は,作者の名前が入っていますが(もっとも信用おけませんが)早期壺には,この2つのマークしか入っていません。ほかに「宜興紫砂」とか「宜興紫砂名壺」などというマークのあるものもありますが,これはもう少し時代が古いものです。

中国宜興のマーク
*

ただ,注意点は,このマークは現在も使われているということです。つまり早期壺が欲しいという人が多いから,このマークを入れて作っちゃえ!という商法です。
最近は高くなってしまいましたが,1万円を越えるようなものではありません。逆に,1万円を超えるような値段でこの早期壺を買ってもそれほどの価値(これは美術品として)はありません。ご注意を!
コレクション

加彩のものだけ集めるとか・・・

倣古という形にこだわるとか・・・
早期壺も手に入って,まだ欲しい!と思ったらもうあなたは「壷迷」
コレクションという出口のないトンネルが待っています。
Welcome 壷迷という感じですが・・・(笑)

焼き物コレクションは茶壺に限らず,最初は数。その次は質というふうになるようです。本来はしっかりとした良いものを集めるのが本筋ですが,逆に数を買って失敗しないと良いものが見えてこないという面もあります。

コレクションには,2つの道筋があります。
ギャベージコレクションと,専門コレクションです。
前者はつまり何でもかんでも自分の感性で集める。後者は,古壷なら古壷,金魚なら金魚の飾りの茶道具というテーマを決めて集める。
一般的にコレクションを始めるなら,茶壺だけというよりも,茶道具全般をというテーマもあります。(これが本筋でしょう)
まず茶壺なら,テーマを決めるのがよいのではないでしょうか。

いずれにせよ,まず良いものを一個ゲットするというのが大事です。
コレクションの世界では基準(ベースライン)と言います。基準壺を決めて,それを下回らないものを集めるのが良いでしょう。ごみを100個集めても,真珠にはなりません。ごみの山です。ここからは,ご自分の予算と勝負です。個人的な意見ですが,3000円くらいのものをいくつもあつめるなら,少し高級なものを一個買うほうが良いとおもいます。

ネットショップは,高級なものをあつかうところもあります。
ただ,アドバイスをするなら,作家ものなどというブランドで選ぶのではなく,やはり基本の形やルールにのっとった伝統的なものを選ぶべきだと思います。概して,作家ものなんていうのはへんてこな形をしたものが多いです。

あるいは,民国くらいの古壷です。これは,骨董品店などで買うことになりますが,民国時期のものは,早期壺に比べてまたさらに数段と良い土である上に,民国時代は,民国や清朝の伝統的なデザインのものがかなり多く作られていますので,デザイン的にも申し分ありません。
現在,骨董市などで入手可能な古壷は,(骨董屋さんがなんといおうと)9割がたは民国の中期つまり明治の終わりから大正くらいのものです。
清朝のものがでることは本当にまれです。明のものなど絶対にでません。(サザビーズのオークションなら別ですが)
一生もの

マイフェイバリット
何かあったらこれだけは
一緒に持ち出すつもり!
コレクションもある程度進むと,「」が欲しくなります。つまりコレクションの目玉です。コレクションの究極は本当に良いものを数点だけのこして,愛でるという姿でしょう。

 その場合は,圧倒的に古壷です。なかなか出会えるものではありませんが,マイフェイバリットな茶壺でお茶を飲めれば,こんな幸せな時間はないと思います。
こういうものはやめましょう
No1


No2


No3
No4
信じられないと思いますが現在日本で売られている茶壺のだいたい6から7割は宜興純正製ではありません
No1 これが一番引っかかりやすいタイプの茶壺です。これを買ってはいけません。どこが悪いかといえば最初からこのようにてかてかと光っています。これは,宜興のものでない一番の証。蓋の釦で本体をたたくと,きーんという感じの金属音がします。本体の形は良いのですが,把や注ぎ口がとってつけたようで一体感がなく,ばらばらな感じがします。実用的にも絶対においしいお茶は入りませんし,何年磨いても育ちません。香港とか,上海あたりのみやげ物屋ではよく見られます。いまや日本国内でもやたらとお目にかかります。
底のシールマークには,孟臣なんて書いてありますから注意!
No2 これは,もう最悪ですね。善意も逆にだまそうとする悪意もなく,ただ安く作ろうとしただけのもの。文字が印刷されています。茶杯や茶盆などとセットで売られていたりします。色が熱でかわっちゃったりします。(笑)
こういうものは,もう評価のしようがないですね。中国物産のみやげ物屋などでよくお目にかかります。
No3 これもどうしようもないですね。こういうバランスの悪さ。練り物の土。この汚れは靴墨です。おそらく欽州窯あたりの粗悪なコピー品です。地下鉄の駅ホールなどで期間限定中国展なんてとこでお目にかかれます。
No4 骨董品です。でもこれは,日本製。茶壺は明治の頃から煎茶の道具として各地で作られていました。
備前,京焼き,常滑,佐渡などです。
悪いものというのではありませんが,茶壺コレクションとしては別のカテゴリーだと思います。
写真はわかりづらいかもしれませんが,ろくろ目が出ています。(横に線があるのがわかりますか)
No5 これは,ちょっと入門編では難しいです。一見バランスも良いようですが,全体に力がありません。それに加えてこの妙なひかり方。偽古壷です。しかも古色や傷がついています。悪意の塊です!

No5

*印は,玉壺雅集より転用させていただきました。