中国では書の世界も,焼き物の世界も臨模といって,勉強のため,また先達の心意気を学ぶために
コピーを作ります。これを倣古といいます。これを贋作といってしまうと,中国芸術が成り立たなくなって志摩します。では,贋作とはなにかといえば,ずばり悪意があるかどうかです。書などは,銘まで模写しますから,
落款までコピーしたからといって,悪質な贋作とはいえないわけです。
ただし,これが金儲けや人をだますためにわざと制作したり,だれかがつくった倣古を真品であると流出させた時点で贋作となります。
ここでは,最近よく市場で見かける巧妙な偽壺をご紹介します。靴墨や柿渋などで時代をつけた,まぁいわば古典的な偽物作りでなく,最近のものは実に巧妙に出来ています。作りはすべて約束取りだし,作家ものには手書きの証明書がついているし・・・

   

古壺の贋作
清徳堂など古壺の贋作
 これは,主として台湾で制作されています。汕頭などでも作っていますが,汕頭ものはすこし知識があれば,すぐ分かるような粗悪なものです。台湾で作られているものは,かなり巧妙で,少しくらいの経験ではわからないかもしれません。
清徳堂以外に,春水堂,逸公,孟臣その他ほとんどの名壺のものがあります。

左の写真を見てください。これが巧妙な偽壺です。合わせ胎の筋が内部にある。
注ぎ口は単穴。はめ底。といったルールはすべてクリアしています。

偽物を見極めるポイントをいくつかご紹介します。


一見しただけでは,本物と見まごうほどです。
イント1:胎の艶

 一見するとかなり養壺された状態に見えます。ただし,古壺の包獎(ほうしょう:時代痕)は,昔からの木造の橋の手すりのようなもので,使っているうちに光ってきたものです。古壺の場合,数ヶ月使わないと艶は無くなります。しかし,いったん育ったものは数回乾いた布で拭くだけでまたパッと光り出します。

ところがこの手の偽壺は,何もしなくても艶が消えません。これは,最初から胎を光らせてあるからで,古壺でこのように最初から光っていて,数カ月おいて置いても艶が全く同じ状態で消えないのは偽物です。

茶壺ではあまり見かけませんが,青花などでは逆に出土品に見せるために,フッ素などで艶を無くして,カセさせているものもあります。全体に一様にカセているものは注意が必要です。

イント2:胎の肌
 次に駄目なポイントは,胎の肌。自然なでこぼこを再現していますが,このような石黄系の朱泥の場合,虫眼鏡で見れば,スポンジのように無数の穴があいています。これは,べたっとしており,つぶつぶをおそらく,紙やすりをかけて再現しているので,大きめの穴になっています。

べたっとした偽壺の肌

本物の朱泥の肌
艶の出方も違うことに注意してください。
イント3:落款その他

 次に落款ですが,これが妙にペタッとしているというのがあります。篆刻は詳しくないのですが,真壺の落款は,字になっていますが,偽壺は,似せようとしただけで,力強さやスピード感がありません。輪郭が妙にはっきりしていて,かつ彫ったという感じがなく,ペタッとしているのが,偽壺の落款のポイントです。
イント4:全体としての品格

 全体に一見良い感じですが,よく見るとボディラインに力が無く,注ぎ口やボディも弱々しい感じです。古壺独特の,ふくらし粉をいれて自然に膨らんだようなふくよかなボディラインがありません。

イント5:たたいたときの音

 これは,やるとしかられるかもしれませんが,蓋の釦で本体を軽くたたいて,キーンと金属音に近い音がして,音が残るものは偽物です。古壺は,電気釜や瓦斯窯で焼きませんから,金属音がするまで焼き締まることはありません。せいぜいカンカンくらいです。
偽物の落款 真品の落款(清徳堂は時代により複数の落款がある)
 

 

作家ものの贋作
何道洪の作品も,ここのところ大陸・台湾・日本で良く見かける,やばいものです。これが実に良くできていて,一見しただけではこれも分かりません。香港などではこれに手書き?自筆証明書や本人の写真がついて売っていたりします。
実にやばいです。何道洪以外にももうほとんど全員の作家ものの贋作が出ています。しかも,その作家得意とする分野のコピーが出ていますので,ルィビトンとか,エルメスなどと同じくらいまずい状況です。税関でコピー商品として取り締まってもらいたいものです!(半分本気)

イント1:胎の土質

 贋作は土が普及品の紫泥です。まず作家が使うような土ではありません。でもなかには良い土を使っているものもあるので注意が必要です。この手の土は育ちません。加えて,本物は丹念にたたいて仕上げていますので自然な輝きがあります。


巧妙な贋作
イント2:全体のバランス

 やはり全体の器形に力が無く,品格がありません。とくにこの場合,注目したいのは,蓋のエッジ部分です。これは,本体とちがい,工具を使って削り出すエッジですので,同じ作家の同じデザインの蓋のエッジは,基本的に個体差があまりありません。写真にして,真壺とオーバーラップさせれば分かります。この偽壺の場合,そんなことをするまでもなく,エッジのバランスが全く違っています。取っ手などは良くまねしていますが,蓋の感じが違いますね。

何道洪の真品
イント3:落款

 落款はやはりポイントです。この偽壺の場合も上の古壺同様,落款野路がペタッとしていて,力がありません。なにより,彫ったという感じがないのがポイント。特に,字の線が模様のようになっていて,字特に感じとしてのスピード感がありません。
 だいたい作家さんたちは誰も落款の字はこだわりがありますから,落款の字だけでも十分鑑賞に堪えうるものです。偽壺のものは,形を似せて模様として彫った感じしかありませんね。

偽壺の落款
作家ものらしく,手書きの製作年月日や,
サインまで入っていますがだめですね。

真壺の落款
字として美しい!