ぴよ頭さんに仕覆の作り方のノウハウを書いていただきました。骨董市などに行くと,仕覆と共箱のついた茶道具は,裸のものよりずっと高くなります。
仕覆自体は日本の茶道からでた独特のものでおそらく中国には無いのではないかと思います。

二重の仕覆に入れ,二重の箱なんかにいれたら,もう我が家のお宝そのものですね。

私は,残念ながら裁縫は全くだめなのでうらやましい限りです。皆様も腕に自信のあるかたは,ぜひチャレンジしてお気に入りの茶壺をもっと大事にしてあげてください。愛着が増すこと請け合いです。

ご質問は,とりあえずこのHP上の掲示板か,壺迷宛にお送りください。転送致します。

さいしょに 仕覆というものを初めて見た日
これから紹介する仕覆の作り方は,私が本を読みながら勝手に行っているものです。先生について教わっているわけではありません。ですから,もし何かが間違っていたとしても全て私個人が責任を負うべきであり,永井百合子氏や,HP「壺迷」の管理者の方には一切責任はありません。あらかじめご了承ください。






2004年7月17日のことでした。
東京ビックサイトで催された骨董ジャンボリーで小汚い布の袋に入った茶壺を発見。
茶壺そのものを気に入って購入したのですが,紐が粉になるほどボロボロになったみすぼらしい布の袋と,ちょっと虫食いのあとがある桐箱がセットでくっついてきました。
 骨董店の方に「これは修理してあげたほうがいいね。」と言われたのですが,肝心の布袋の名前を覚えてくるのを忘れてきました。修理しようにもどこで修理してくれるのかも知らず,なおかつ布袋の名前も知らなかったので調べることもできず,こちら「壺迷」の掲示板で教えを請いました。
袋の名前は「仕覆」。仕覆についている紐の名前は「締緒」。お茶の世界に縁のなかった私にとって,この2つは初めて聞く単語でした。
茶壺の仕覆の作り方が載っている本に出会う 材料について
どうせ買ってしまった仕覆なのだから,きれいに修理してあげようと思い,ネットや本屋でいろいろ調べているうちに1冊の本に出会いました。

 永井百合子著 「お茶の袋もの」 世界文化社

本屋をさんざん立ち読みして回りましたが,茶壺の仕覆の作り方が載っている本はこれだけでした。当時は全く作る気はなかったのですが,よく読んでみようと購入。
 結局それが仕覆を作りだす第1歩となってしまいました。
 
お茶道具の仕覆には,金襴,緞子などが使われるらしいのですが,茶壺の仕覆にもっとも適しているのは更紗だそうです。骨董市でもよく見かけますが,骨董市にはなじみのない方には私が何度か通っているお店がお勧めです

「呂藝」 東京都杉並区荻窪5−16−15 井上ビル2F
     03(3398)2144

店内にはそれこそ様々な布がたくさん並べられており,そこにいるだけで楽しくなります。「更紗が欲しい」とお店の方に言えば,どのコーナーで探せばよいか親切に教えてくれます。中央線荻窪駅西口から出て,線路沿いに三鷹方面に歩けばすぐです。  
また,締緒は正絹でコシがあるものが望ましいそうです。京都の菊光堂というお店が通販できますので,もっぱらそちらで緒を購入しています。

 「菊光堂」 京都市下京区四条高倉西入ル 075(221)0343

いつも親切で丁寧なメールをいただきます。長さは4種類,色は42種類あるそうです。
かがり糸もちゃんと同色のものをつけてくれます。
(1)採寸して型紙を作る (2)試し縫いをしてみる
この茶壺の仕覆を作ろうと決意したら,その茶壺のサイズを計ります。
「お茶の袋もの」という本の,96ページに急須の採寸の方法が載っていますので,それに忠実に採寸していきます。型紙は急須のページと天目茶碗のページを交互に見ながら作成していきます。底の厚紙は表地,裏地,試し縫いで3枚使用しますので,3枚作っておきます。中心から円を4等分する線を書いておきます。
 

型紙ができあがったら,安い布で試し縫いをしてみます。
縫い方はぐし縫いでOK。底の厚紙は直接縫ってしまいます。口の部分は縫い代を折ってぐし縫いしておき,ぎゅっとしぼれるようにしておきます。試し縫いができたら茶壺を実際に入れてみて具合を見ます。この写真の試し縫いでは,底から胎のいちばん太い部分かけて少しタプタプしていたので,また,高さが合ってない部分もあったので,型紙をハサミで削って修正しました。
 
(3)布と緒を選ぶ (4)布を裁断する
表地になる布と,裏地になる布,そして緒を選びます。写真の布は,青の和調木綿布が表地,ピンクの花柄正絹布が裏地,緒は朱色が表地に映えるだろうと思い,この色にしました。茶壺が大きいので緒は常緒ではなく長緒にしました。


 
布に型紙をおいてチャコペンで印をつけ,裁断します。
表地ほうはいったん口部分以外のところに印をつけ,5mmほど上にずらして口部分の印をつけます。これにより表地は裏地より5mm長くなります。
底の厚紙はヤマトのりを薄く塗って布に貼り付け,乾いてよく貼り付いてから布を裁断します。裁断した後は押花の要領で本にはさんでおくと厚紙が反ったりしません。
底ののりづけも,型紙の置き方も,模様合わせをよく考えて行うようにしてください。
(5)ダーツと脇を縫う (6)口の折山線にしるし縫いをしておく
「半返し縫い」でひと針ずつ丁寧に縫っていきます。縫い始めと縫い終わりは2度縫いをします。表地も裏地もすべてダーツと脇を縫ってしまいます。ダーツは縫った後に切れ目を入れます。
 
綿を入れてしまうとチャコペンで書いた線が見えなくなってしまうので,布と全然違う色の糸でチャコペンの線の上を縫っておきます。玉止めと玉結びは,必ず表側に出るようにするのがポイント。
 
(7)底付けをする (8)表と裏の底をボンドでつける
脇とダーツを縫い終わった布を中表にします。厚紙を張り付けた底を,やはり中表になるように起き,底の厚紙に書いておいた4等分する線と,脇,ダーツの線を合わせて待ち針を打ちます。続いてその待ち針の間にもそれぞれ左右が均等になるように待ち針を打ちます。合計で8ヶ所になります。


その8ヶ所の間を本返し縫いで厚紙ごと縫っていきます。けっこう力が要る作業です。
円周の4分の1ごとに,本体の縫い代に2ヶ所の切り込みを入れながら縫い進めていきます。表地も裏地も同じ作業で底付けします。

 
底付けがうまくいったら,底の厚紙にボンドを塗り,ダーツとダーツ,脇と脇の位置をしっかり合わせて貼り付けます。洗濯バサミ等をうまく利用してがっちり固めます。くっつくまでに時間がかかるので,一晩くらい寝かせるつもりで放置します。
 
(9)表地に綿をかがる (10)しつけの前のしつけ縫いをする
底同士がよくくっついたら,縫い代を5mmくらいに切りそろえます。木綿の綿を薄くのばし,本体の半身がすっぽり納まる大きさに広げます。綿を布の大きさに合わせて切りそろえて端を糸で細かくかがっていきます。





半身が二つともかがり終わったら,余った綿をよって細い紐を作ります。その紐を底の部分にぎゅっと結びます。
 
しるし縫いの線を折ってアイロンをかけます。ダーツは切れ目から開くように,脇の縫い代も開くようにアイロンをかけていきます。次に「しつけの前のしつけ縫い」をします。アイロンをかけたところが崩れないように固定するためです。この作業が必要なのは不器用な私だけかもしれません。
このときに表地は口が先で脇が後,裏地は逆に脇が先で口が後になるように折っておきます。これを間違えると大変ですからご注意を!
 
(11)表地と裏地を合わせてしつけ縫いをする (12)本体を入れてみる
表地が外側になるように布をひっくり返し,表地と裏地を合わせます。特に問題がないようでしたら,そのまま「本当のしつけ縫い」をしていきます。「本当のしつけ縫い」が済んだら「しつけの前のしつけ縫い」は取ってしまいます。ついでに口の折山線の「しるし縫い」も取ってしまいます。
 
しつけが終わったら茶壺を入れてみて,長さやたるみ具合をチェックします。
もし合わないようでしたら,しつけをほどいて縫い代を使って調整します。



(13)緒をかがる (14)星まつりでつばくろ口を縫う
針をふとん針に代え,緒を千鳥かがりでかがっていきます。大変力が要る作業なので,針を抜くのにヤットコを使います。千鳥かがりは難しいので,間違えないように慎重に,あせらず,よく確かめつつ,かがっていきます。
 
緒をかがったあと,しつけ縫いをすべて取ってしまいます。つばくろ口の部分の表裏をもう一度よく合わせ,星まつりで縫います。星まつりの前にもう一度しつけ縫いをしてもいいかもしれません。


(15)露を入れて完成
つばくろ口の縫いどまりに緒のかがり糸の余りで露をほどこします。これで完成です。
茶壺を入れて緒を結んでみます。最初は違和感があったとしても,そのままひと晩置いておくと仕覆が茶壺の形になじんできます。
いろいろな緒の結び方にチャレンジしていますが,不器用なせいかなかなかマスターできません。とりあえずいちばん簡単な梅結びだけはなんとかできるようになりました。