紫砂泥はその時代によってかなり特徴があり,古壺の最終的な時代判定の決め手となるものです。いくらコンピュータを使ってコピーを作成しても,胎土自体をコピーすることはできないといわれています。



紫砂泥の最高峰
明代は一般的に堅い泥質で,潤いがあり悠然とした光沢があります。しかも胎土は適度に大きめの砂の粒子が残っているので,堅すぎることもなく,軽い叩くとかたい木を打った音がします。
茶壺の色の大部分は暗肝色で 黄褐色の砂をはさんで,見たところ梨皮の点のようで,肌は厚めです。茶壺の表面は平滑で整然として,適度な華美があり堅さもちょうど良いものです。

*砂を加えているのでは無く,紫砂泥を掘ったまま無分別で使ったためという説もあります。また,梨皮泥も焼成の際に一部溶けた部分がありできたというのが最近の考えです。(現在は砂を混ぜ,表面を焼く前に水洗いして梨皮泥を作っています。)




明末〜清初 清初の茶壺は明代に次いで ,色合い,泥の質ともに最上の部類に属します。 
 この時期の胎土には粗い砂を含んでいるものと含んでいないものがあります。粗い砂を含んだものは,泥の粒と砂の粒が混じって野趣を帯び,素朴な感じがあり,潤い光沢があります。これは採鉱時に表面,中層,底層といったグループで紫砂を分別せず,そのまま使っているためです。従って,ベーシック泥の中に,黄泥や緑泥,様々な大きさの砂が大量に混じっています。

粗い砂を含まないものは,鉱石から紫泥を作る際に,分別をしてから泥にします。このため泥質と砂質は細かく,表面は非常になめらかなのが特徴です。
紫砂泥:胎が頑強で堅く光沢があり潤いがあります。ナスのような深い紫と光沢があります。
白泥・黄泥:この時期には白泥,紅泥,黄泥は現存しません。

胎土は非常に堅く,透明感があり,光沢がありなめらかな砂です。




清中期(乾隆) しっとり感や光沢透明感などは,清初の紫砂泥にはおよびません。
またこの時期の胎土は,黄色や緑色の砂粒は清初より少なく,紅褐色の粗めの粒が多く混じっていることが特徴です。

泥質は非常にきめが細かく,宝石のようで,鋼のように硬く,光沢があり,水に浸すと磨りガラスのように見えます。

紫砂:表面は黄色みを帯び,初期は砂質が粗い。
団泥:金黄色の中に,墨色と赤褐色が混じり,その間に黄色の粒が入る。
紅泥:泥中に少量の淡墨色と黄色の顆粒が混じる。胎土はあまり堅くない。
雍乾時代 紫砂:胎骨は堅いものの,温暖で湿潤や透明感はすでに前の時代のものより見劣りがします。

朱泥:胎骨が緩く,しまりが良くない,色は枯れてまったく光沢が無いので赤色の釉で表面を覆って補っているが,砂本来の美しさはありません。
清中期(嘉・道) 紫砂茶壺の胎骨の堅さは清初に匹敵しますが,暖かみや潤いに関してはかなり見劣りがします。白泥も同じです。唯一朱泥の胎骨の堅さは明代にはおよばないものの雍乾時代より勝っているようです。

紫砂:色のパターンが多く,黄色,褐色,紫の泥の中に大量の黄色の粒が混じる。
清末 紫砂はまだ嘉道時代と同じ堅さがあるが色合いは味気なく,砂と土の空気をうまく抜いていない。

泥質は多元化し,配合結果,黒色(烏泥)や白泥が生産される。
紫砂:紅紫色に含まれる黄色の粒はかなり少ない。
朱泥:朱泥の小茶壺のこの時期の泥質や出来映えは例外的にすばらしい。(だめという説もある)




民国 紫砂泥の最盛期
作家ものの紫砂は非常に優れており,清末の胎土より柔らかさがあってすばらしい。特に,薄目の紫泥や団泥は出色。一般普及品は,それほどでもない。
紫泥:泥質は非常に良い。すぐに養壺できる。胎土は堅く,光沢がある。
朱泥:胎は乾き,暗紅色。
団泥:青灰色をベースに大量に黄色の粒子が入り,赤褐色と淡墨色の粒が混じる。

現代
(1955〜77)
民国からの引き続きで,伝統的な質感があり,なめらか。
(文革期) 養壺には時間がかかるが,いったん養壺してしまえば,艶はすばらしい。
(1980〜85) 少量の黄色粒と大量の黒色粒が入り,粒子も粗くかなり艶をだすのに時間がかかる。

     紫玉金砂の記事などを参考にさせていただきました。