東洋陶磁美術館の鉄斑紋玉壺春
もっぱら青磁・しかも宋磁に浮気している最近。青磁の名品を美術館などで見ていると,どうしても窯元が見たくなってしまうのが私の悪い癖。宋元の名品もさることながら,今窯元はどうなっていんだろう?どんなところでどうやって作っているのだろうと思い,河南省の鈞窯とか汝窯跡も考えたのですが,とりあえず今でも生産している龍泉窯へ行くことにしました。
 龍泉窯への行き方などは,HPに2〜3先達さんたちの訪問記があって,参考にさせていただきましたが,本屋で売っている観光ガイドブックには,当然ながら龍泉窯を紹介しているものはありません。虎ノ門の中国観光局や,神田の中国系書店で地図を入手し,あとは中国のヤフーなどで検索したホテルガイドをたよりに出発です。
 青磁初心者としては,闇雲に古いものに手を出してもまずたか〜い授業料を払うことになるのは目に見えていますので,宜興ものを集めだした頃も,宜興で実際に名品や作家ものを見てから,良い悪いがなんとなく分かるようになった経緯があるので,今回もまず窯元=作家ものをゲットし,当面の基準壺にしたいというのが目的。



龍泉への今回のルート

(1)空路上海へ

(2)国内線に乗り換え温州へ

(3)鉄道で麗水へ

(4)タクシーをチャーターし龍泉市へ

(5)    〃    大窯跡へ

(6)麗水から夜行で杭州経由上海へ
(南宋官窯博物館と
龍井茶を買うため途中下車)


温州
 最近はもっぱら台湾ばかり行っていたので,中国大陸はほぼ一年ぶり。ゴールデンウィーク初日都もあって,成田にはほんとうにぎりぎりにつきました。お金をおろす閑もなく?上海で下ろそうと思っていたら,空港にシティバンクのCD機がなく,ちょっとキャッシュが不足で不安!(北京にはCD機があるのに!)
 浦東空港で2時間ほど待って温州空港へ。ほぼ時間通り。ホテルは,日本から中国のインターネットで予約を入れているので,値段交渉などせずすぐにチェックイン。あと初日の仕事は,明日の麗水までの切符手配。駅に買いに行ったら拍子抜けしたくらい簡単に購入完了。あとはゆっくりひさびさの中国ビール。ホテルのレストランに行ったら,入り口にできあがったサンプルが飾ってあって,メニューでなくそこから選ぶ方式。麗水もそうだったし,このへんではこの方式はやっています。

市内にあまり見るようなものは無かったです。頼みの綱の博物館も無いようだし・・・

 翌日,温州にある  窯跡を訪ねる。その山は公園となっていて,タクシーで窯跡近くまで行く。まず山の頂上のホテルに行って場所を聞くが分からず。次に散歩していたご老人に尋ねるが,やはり聞いたことがないとのこと。峠のお茶屋や歩いてきた人などに手当たり次第に聞くが,結局分からず。結局見つからないまま電車の時間が来たので断念。


おそらくこのあたりだと思う,温州 窯跡(笑)
こんなところを小一時間探していました



最近の軟座はとてもきれい(しかもがらがら)


車窓の風景も実に美しい!
温州から麗水への電車の旅
麗水
 2時間ほどで麗水着。
タクシーで市内へ。運転士に日本人を乗せたのは初めてといわれる。(このフレーズ久しぶり!田舎に来たというのを実感)そういえば,前回の平遙古城も申し分ない田舎だったよなぁなんておもいだしました。基本的には辺境マニアではないのだけど・・・

ここはノーアポなので,温州で聞いたホテルへ・・・

 国際飯店というところにチェックイン後,さっそくお目当ての麗水博物館に行くと,「解放していない」というつれない言葉。 「明日は?」と訪ねると。
「今まで解放したことは無い!」といわれ,結局断念。全く解放していない博物館というのもなかなか無いよなと思う。麗水での目的はこの博物館だけだったのに。ここがだめなら,龍泉まで直行だったのに!窯跡についで二連敗。
今回の旅は駄目かなと少しへこむ。

夜,明日の龍泉までのタクシーをホテルで頼むと,「龍泉まではタクシーで行ける距離ではない。バスで行け!」といわれる。フロントのおねーさんに頼むのはやめ,ベルのおにいさんにたのんだら,30分後くらいに予約してくれました。300元とのこと。


まぼろし!の麗水博物館
見たかった!


龍泉への山道は,渓谷沿いに3時間。
空気も美味しいし最高でした。
泉へ
 龍泉は,数年前に市に昇格したということ。龍泉渓という川沿いに山道をくねくね3時間。2年後には,杭州〜麗水〜福建省に抜ける高速道路が整備され,かなり短時間で龍泉に行けるようになるという。天気も良く山の中なので空気はうまいし,新緑がまぶしいほどで,快適なドライブでした。(落石とスピードが少し怖かったけど・・・)
 正午頃到着。龍泉は青磁と宝剣の町。日本から3日にしてようやく到着です。行ってみるとこじんまりとして住みやすそうな町だなぁというのが第一印象。宜興市内と同様,町中どこでも青磁ばかりという感じではありません。これだけ山の中だとわざわざ青磁を買いに龍泉まで来ないからということだと思います。ホテルで昼ビール。
 だいたい武夷山もそうだけど山の中の町は,蛇とキノコが名産ということになっており,レストランに行くと案の定。キノコが名産。(蛇はなし)アワビキノコだのなんだの珍しいキノコの4種盛り合わせが結構いけました。


こじんまりとした龍泉市内


市内の龍泉青磁を売る店


大窯村へ行く目印の看板
ここまで龍泉市内から一時間半くらい
大窯へ
 翌日,車とガイドさんを事前に上海の友人経由でお願いしてあったので,安心して宋時代の窯跡「大窯」へ。龍泉市からさらに1時間強さらに山深いところへ・・・山の村という感じの大窯村に着く。私個人的には,もう20数回中国に来ているのですが,ここはもう3本の指に入るくらいのすごい田舎。のどかとしか言いようがありません。山の村なので,農家で作っているのはみなキノコ。お店というものに気が付きませんでした。景徳鎮の高嶺村や,麦石山なんていうところでもたばこ屋くらいあったのに!

 1000年も前にここで焼かれた青磁が,龍泉渓に沿って温州か,寧波あたりの港に運ばれ,そこから延々日本の鎌倉あたりまでわたったのかと思うと,感慨ひとしおです。 今でも3日もかかるのに!いったい全体,宋の頃は日本まで全体どのくらいかかったことやら・・・


 川沿いの青磁工房をまず見学。土は黄土色のものと,白いものが2種類。ほう!と思って聞いてみると,白いのは,生産用の型を作っているとのこと。一所懸命,宜興風の(偽物)茶壺のサイズを測って型に起こしていました。茶壺は金になるというのがここ,龍泉までも伝わっているようです。製品はみな黄土色の土を使っていました。村を越え窯跡へ。
 窯跡近くに,磁片の土壁を塗った家!というのがあってびっくり。べつに観光客向けに「受け」をねらったものではなさそうで,ごく普通の家。犬が吠えたり豚が寝ていたり!
 磁片は,けっこう道や畑に落ちているのですが,さすがに宋のころのものはほとんどなく,元か明くらいのいわゆる天竜寺ものばかり。渓口とか他に行かないとなさそう。
とりあえず土産物屋も,休憩所も何もないので小一時間ほどで引き上げることにしましました。何もない山間の村という感じで,景徳鎮とちがい,発掘ものの壺を売りに来たりすることもなかったです。おみやげで「大窯まんじゅう」とかあったらいやですよね!


大窯跡の碑
山の村という感じがわかっていただけますか?


大窯村のメインストリート!
冗談ではなくここがメインの通路


大窯村の青磁工場
千年前の宋の頃もこうしてここでつくっていたんでしょうね。


大窯跡


壁を磁片で固めた家!


壁のアップ
龍泉博物館
 行く前に参考にさせていただいた先達さんたちのHPを見ていると,無理にあけてもらったというのが多いのですが,今回も休みのところをあけてもらいました。きっと,客が来ないといつもクローズなんだろうとおもったりして・・・楊州博物館もそうだったし・・・

 とりあえず,見張りの人もいないので文字通り独占状態で歴代の作品を見まくる。景徳鎮博物館は,出土の張り合わせしか無かったのに,龍泉窯は,完品が結構残っています。やはり官窯と民間窯のちがいですか・・・。

 時代別に作品やかけらが展示してあって,本当に勉強になりました。龍泉青磁は宜興にくらべると,時代ごとの作風や釉薬の違いは初心者でもわかりやすく,宋代と,元代,明代,民国との差はほぼマスター(したつもり)。このように時代別に展示されているからわかりやすいわけで,台北故宮や,日本の美術館のように名品ばかりですと,なかなか難しいですね。あとは,倣古のものがどのくらい精巧にこれらをコピーしているかです。


たぶん(?)毎日が休館日の龍泉博物館
違っていたらごめんなさい


時代別に展示


The龍泉ともいうべき盤口鳳耳壺


貴方も鑑定士というコーナー
番号別に時代をあてます!

この氷裂紋皿をみて,ガイドさんにどうしてもこの作家に
合わせて欲しいとだだをこねる
工芸美術師「葉小春」の作品