早期壷 その18 高泉発茶行

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マレーシアの茶屋が宜興にオーダーしたものです。

そろそろ早期壷もねたがつきてきました。

水平壺以外も早期壷なのですが,そこに入り込むと老一廠だけでとてつもなくあるのと,最近のブームからはスコープ外といえるので・・・

 

イギリス ワトコンベ窯

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イギリスで作られた倣宜興「ワトコンベ窯」の急須です。最近は窯自体が閉じたようで見ることはできませんが、バランスの良いポットです。ヨーロッパでは磁器の生産よりも宜興の倣作が先に立ち上がりました。ビクトリア&アルバート博物館に同様のポットが収蔵されています。

 

呉瑞全 楓渓窯

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水平壺一筋40年の呉瑞全作品。これも落ち着いたトラディショナルなデザイン。この作品の良さはなんと言っても水色。水色というのは焼き上がった状態の透明感で,これほど水色があでやかな現代作品には滅多にお目にかかれません。

ちなみに呉先生今の宜興と同じ浙江省の泥を使っています。

章燕明 楓渓窯

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現在水平壺の世界での人気ダントツ 潮州楓渓窯 中国陶磁芸術大師「章燕明」作の標準壷です。最近の作風は作品集をみても現代の中国陶芸作家さんにありがちな「妙」なデザインが多いのですが,本作は違い「ちゃんとやればすごいんです」的な超トラディショナルな早期作品です。欠点がないです。鶯歌の阿萬師を彷彿させる上がりです。でもこういう伝統的な良作だけを作っていると評価されないのが現代中国陶芸界なのかもしれません。

 

 

早期壷 その17 ありえない

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刻字壷ですが,中国宜興という4字款に文革時のスローガンを刻するというのは,ありそうであり得ないものです。文革壷については大きなものには「希灯」などの落款が入っているものや,「漢君」など壺の形を入れたものはありますが,「中国宜興」という輸出向け落款のものは国内向けには使われていなかったはずです。というのも大躍進や文革期には宜興製品そのものが贅沢品として否定されており,宜興壷を置いていた店は破壊されたりしたため,宜興製品は,香港製の油壺であるとか台湾の鶯歌製であるとか苦しいいいわけをしていたという状況でした。そこに本来輸出向けである「中国宜興」落款で,かつ潮州限定である小さな水平壺にスローガンを入れるというのはどうも蛇足というか,ありそうであり得ない組み合わせです。

早期壷 その16 盔帽(鉄兜)標準壺(レプリカ)

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1930-1950

盔帽標準壺は「膨蓋水平」ともいわれ,胎土に細かい梨皮胎の水平壺で潮汕功夫茶用に生産されました。大きさは2杯が主,4杯がわずかながら,6杯以上はほとんど無いようです,蓋内に杯数を押したものがある,4杯壺には「六杯」款が入る。蓋が鉄兜に似ているのが特徴,ほぼ球体で,注ぎ口がとがってハンドル下にネズミのしっぽのような飾りが入ります,(このレプリカにはありません)壺底には「荊溪惠孟臣製」の落款,高台に整形がなされており後の標準壷とは異なっています。

早期標準壺の原点です。写真は最近のレプリカですが,この独特の蓋の中国軍鉄兜状のフォルムが特徴です。

早期壷 その15 H441786 標準壷

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1974-1976年に香港の茶葉店がオーダーした紫砂鴿嘴標準壺です,底款落は白文で「H441786」という鉛章が押されています。

おそらくですが日本で入手するのは難しいと思われます。ちなみに私も探し回って海外調達です。

でも,一般のコレクターが躍起になって探すほどのものでもありません。

早期壷 その14 祥興茶行標準壷

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香港祥興茶行から一廠への1978-79年にかけてのオーダー品。標準壺は4、6、8杯,線瓢壺、西施壺は4、6杯などがあります。これは8杯の標準壺です。

紅土あるいは紫砂が主で蓋内に名款は無く,底款は「中国宜興」の印款と「祥興茶行」の黑釉款が上書きされています。

早期壷 その13 早期壷にあらず

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中国宜興款の朱泥倣壺で小さい12杯くらいのものです。

小さめの「倣壺」という形は現時点で第一工場のリストにありません。(大きい250cc超のものはあるようですが。)

ここは伏せますが,あるところの仕上げを見ると当時の仕上げとは明らかに異なる最近の処理がされています。よってこれは90年以降の新しいものであると思います。

「中国宜興」自体は老一廠の商標ではないと思われますので,これを贋物とかコピーとも言えず,ただの量産品といえます。

また最近流通している墨縁齊意堂,福記や王寅春款はほとんど最近の作ですが,款は個人作家・工房を示すので倣作(コピー)であると言えます。