早期壷 その17 ありえない

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刻字壷ですが,中国宜興という4字款に文革時のスローガンを刻するというのは,ありそうであり得ないものです。文革壷については大きなものには「希灯」などの落款が入っているものや,「漢君」など壺の形を入れたものはありますが,「中国宜興」という輸出向け落款のものは国内向けには使われていなかったはずです。というのも大躍進や文革期には宜興製品そのものが贅沢品として否定されており,宜興壷を置いていた店は破壊されたりしたため,宜興製品は,香港製の油壺であるとか台湾の鶯歌製であるとか苦しいいいわけをしていたという状況でした。そこに本来輸出向けである「中国宜興」落款で,かつ潮州限定である小さな水平壺にスローガンを入れるというのはどうも蛇足というか,ありそうであり得ない組み合わせです。

早期壷 その16 盔帽(鉄兜)標準壺(レプリカ)

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1930-1950

盔帽標準壺は「膨蓋水平」ともいわれ,胎土に細かい梨皮胎の水平壺で潮汕功夫茶用に生産されました。大きさは2杯が主,4杯がわずかながら,6杯以上はほとんど無いようです,蓋内に杯数を押したものがある,4杯壺には「六杯」款が入る。蓋が鉄兜に似ているのが特徴,ほぼ球体で,注ぎ口がとがってハンドル下にネズミのしっぽのような飾りが入ります,(このレプリカにはありません)壺底には「荊溪惠孟臣製」の落款,高台に整形がなされており後の標準壷とは異なっています。

早期標準壺の原点です。写真は最近のレプリカですが,この独特の蓋の中国軍鉄兜状のフォルムが特徴です。

早期壷 その15 H441786 標準壷

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1974-1976年に香港の茶葉店がオーダーした紫砂鴿嘴標準壺です,底款落は白文で「H441786」という鉛章が押されています。

おそらくですが日本で入手するのは難しいと思われます。ちなみに私も探し回って海外調達です。

でも,一般のコレクターが躍起になって探すほどのものでもありません。

早期壷 その14 祥興茶行標準壷

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香港祥興茶行から一廠への1978-79年にかけてのオーダー品。標準壺は4、6、8杯,線瓢壺、西施壺は4、6杯などがあります。これは8杯の標準壺です。

紅土あるいは紫砂が主で蓋内に名款は無く,底款は「中国宜興」の印款と「祥興茶行」の黑釉款が上書きされています。

早期壷 その13 早期壷にあらず

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中国宜興款の朱泥倣壺で小さい12杯くらいのものです。

小さめの「倣壺」という形は現時点で第一工場のリストにありません。(大きい250cc超のものはあるようですが。)

ここは伏せますが,あるところの仕上げを見ると当時の仕上げとは明らかに異なる最近の処理がされています。よってこれは90年以降の新しいものであると思います。

「中国宜興」自体は老一廠の商標ではないと思われますので,これを贋物とかコピーとも言えず,ただの量産品といえます。

また最近流通している墨縁齊意堂,福記や王寅春款はほとんど最近の作ですが,款は個人作家・工房を示すので倣作(コピー)であると言えます。

早期壷 その12 田字髭中

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このタイプあまり認知されていません。中国宜興を篆書で田の字のなかに彫り込んでいます。中の字に二本旗が立っているタイプです。これを勝手に髭中と呼んでいます。

あと,蓋が盛り上がっていわゆる鉄兜といわれる蓋のタイプ。注ぎ口がアンバランスに大きいのは初期の「型」自体,金属板をカットして道路工事のカラーコーンのようにまるめた手作りで大きさが不統一であったため,大きい小さいがあります。この個体はアンバランスな注ぎ口となっちゃいました。実用的にはこの方が使いやすいです。

 

小さいこと

テレビで宜興民国時の百果壺が出て,ハンドルをコウモリと行っていましたが。百果の果とは実のことを指します。コウモリは実ではありません。

予備鑑定しているスタッフの方もう少しちゃんと調べて鑑定士にレポートしてください。鑑定士が恥をかきます。

あのハンドルは菱の実をモチーフにしています。

「菱の実」の画像検索結果

菱の実(インターネットより)

 

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それから鈕も霊芝ではなくキノコです。

早期壺 その10 一杯壺

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写真の標準壺に違和感ありませんか。そうです方円牌シールが異常に大きいのです。

というのは嘘で、茶壺のほうが小さいのです。なんと一杯壺。蓋裏に1と押印されています。

でも玉露を入れるには実用になる大きさです。(使ったことは無いですが)うちにはもっと小さな豆急須があといくつかありますが方円牌シールがついている早期壺はこれだけです。

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