早期壷 その17 ありえない

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刻字壷ですが,中国宜興という4字款に文革時のスローガンを刻するというのは,ありそうであり得ないものです。文革壷については大きなものには「希灯」などの落款が入っているものや,「漢君」など壺の形を入れたものはありますが,「中国宜興」という輸出向け落款のものは国内向けには使われていなかったはずです。というのも大躍進や文革期には宜興製品そのものが贅沢品として否定されており,宜興壷を置いていた店は破壊されたりしたため,宜興製品は,香港製の油壺であるとか台湾の鶯歌製であるとか苦しいいいわけをしていたという状況でした。そこに本来輸出向けである「中国宜興」落款で,かつ潮州限定である小さな水平壺にスローガンを入れるというのはどうも蛇足というか,ありそうであり得ない組み合わせです。